オレンジと緑

気ままに。見た映画の備忘録にしていきたいです(ネタバレ無し)

「サーミの血」/ネタバレ無、映画レビュー感想

ポスター画像

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監督、脚本:アマンダ・シェーネル

製作:ラーシュ・G・リンドストロム

出演:レーネ=セシリア・スパルロク、ミーア=エリーカ・スパルロク、マイ=ドリス・リンピ、ユリウス・フレイシャンデル 他

2016年、スウェーデンデンマークノルウェー、108分

配給:アップリンク

原題:Sameblod

 

 

*ざっくりあらすじ

部族差別や研究対象になるサーミ人。その血を受け継ぐ一人の少女、エレ・マリャ。自分の人生と自由を取り戻すため、家族と故郷を捨てる決断をする。

 

***

 2018年1作目、見てきました!地方はやっと今の時期公開^^;「サーミの血」はたまたま映画館で予告動画が流れていてヨイク(サーミ人の伝統歌謡)のメロディがとても美しく、ずっと頭に残っていました。

北欧の風景美や福祉国家とは裏腹に、人種差別が行われていたことを私は全く知らなかったので驚きましたが、少数民族に対する差別の一端を見せてくれる映画でした。

 

 監督のアマンダ・シェーネルさんは親と祖父母世代がサーミ人であり、主演を演じたレーネ=セシリア・スパルロクさんは現実でもサーミ人!今も家族と共にトナカイ狩猟をしながら生活しているそうです。監督はいつかサーミについての映画を作りたいと思い、この映画を作るにあたってサーミの子供を集めて傷ついた差別発言を聞き出したそうです。その言葉たちが実際に映画で使用されているので、サーミ人にぶつけられる言葉一つ一つが重く、いろんな背景を考えさせられました。

 

 

 

 

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ヨイクを歌えば心は帰れる

頭がよくしっかり者のエレ・マリャ。妹と共にサーミの地を離れ、寄宿学校で過ごします。学校生活で受ける差別、学校外で向けられる人々の視線、そんな日々の中、サーミ人の心の拠り所はヨイクでした。劇中で歌われるヨイクは、シーンごとに様々な喜怒哀楽を表します。このような伝統歌は、一見美しく共通帰属意識を芽生えさせますが、その土地から逃れられない足かせになっているのではないかと感じました。

そして、誰しもがそのような足かせを持っていると思います。(例えば、故郷の歌や食べ物、方言など)その伝統を守る者と離れる者。エレ・マリャは後者になりますが、映画全体を通して完全に断ち切ることはできない、故郷というものは強力で強烈なものだと感じました。

 

 

 自分の部族に誇りを持てるか

主演のレーネ=セシリア・スパルロクさんは、サーミ人であることに誇りを持っているとインタビュー記事で語っています。その点が彼女が演じるエレ・マリャとは大きく違うと感じました。周りからの差別、そしてエレ・マリャ自身にもサーミ人への偏見があったでしょう。その偏見は、何度も心身が傷つけられようと前に進む原動力として描かれています。

 

愛する家族、偏見のない目、自由。全ては手に入れられない当時の残酷さに心が痛みました。特に終盤の彼女の母の行動は…言葉になりません。

レーネ=セシリア・スパルロクさんは今回初めての演技だったそうでびっくりしました。明るい顔、子どものように笑う顔、自信に満ちた顔、穏やかな顔、おびえた顔、嘘をついてる顔、色っぽい顔、ふいに見せる大人な顔、何を考えているのか分からない顔、、、百面相のようでした。ある表情から違う表情へグラデーションのように変わる表情変化が素晴らしかったです。

 

 

 無意識的な加害者になっていないか

 この映画には差別する人々のタイプが二つ描かれているように思いました。一つは明らかな差別をする人、もう一つは好奇心を手段に無意識に差別する人。後者の人間が映画で登場した時にはっとしました。私もこんなことを言ったことはないだろうかと。差別する気はさらさらないのに無意識に差別をしている人間の様子に鳥肌が立ちました。

理解したい気持ちを持ってマイノリティーに近づくことは良いですが、どこかで下に見ている気持ちを持っていると必ず相手に伝わります。相手を理解したいのなら、対等または尊敬の気持ちを持って相手に接さなければいけないと改めて感じました。

エレ・マリャと共に過ごすうちに、観客もマイノリティーの気持ちを悲しくも発見・共有できる映画だと思います。

 

 

・・・

 

 

見ていられないほどの過激な差別シーンはあまりなかったように思います。ただ、暴力、体罰シーンはありましたし(演技がすごく上手でエレ・マリャが本当に痛そうにしてて辛かった;;)、サーミ人はトナカイ狩猟をして生活しているのでトナカイの血、一部シーンでは人の血も出てくるシーンがあるので苦手な方はお気をつけてください。

少しですが、ラブロマンスもあります。お相手のユリウス・フレイシャンデルがとってもイケメンです。最初の出会いのシーンだけ10回リピートしてくれてもよかった...

 

 

 

ストーリー:★★★★

映像:★★★★★

配役:★★★★★

バイオレンス性:★

ラブロマンス:★

コメディ、ホラー、アクション:0

(5点満点)

 

 

 

 

~オススメ場面~

抗えない運命に屈したくないとき、差別について考えたいときに。

 

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